プレジデントは、1965年から2010年まで製造・販売されていた日産のフラッグシップラグジュアリーセダンです。法人向けハイヤーや公用車・社用車としてのショーファードリブンとして使用されていました。「大統領」「社長」を意味する「プレジデント」という車名には、日本の政治や経済を動かすような大物に乗ってほしいという想いが込められています。
室内長は当時のアメリカのリンカーンを超える1,940mmで、大物を乗せるに相応しいゆとりがありました。熱線吸収ガラス採用のフロントウィンドウや曇り防止ために電熱線が入ったリアウィンドウ、快適に過ごすためにクーラーやリアシート専用ヒーターなど、先端技術も数多く詰め込まれており、申し分ない豪華なセダンです。また、国産乗用車で初めてパワーステアリングを採用したモデルとしても知られています。
初代の150型に搭載されていたエンジンはY40型 4.0L V型8気筒 OHVとH30型 直列 3.0L 6気筒 OHVの2種類です。4種類展開されていたグレードのうち、D仕様とC仕様にはY40型、B仕様とA仕様にはH30型が搭載されていました。V型8気筒エンジンは当時の国産乗用車のなかでは最大サイズのエンジンでした。最高出力は180馬力とそこそこではありますが、最大トルクは2,800rpmから発生するという力強さを誇ります。
サスペンションは、高級車らしくフロントがダブルウィッシュボーン式で、リアがリーフ式です。水平基調のデザインは、もともとセドリック用に考案されていたものでしたが、ピニンファリーナのデザインに差し替えられたためにプレジデントに転用されました。トランスミッションは3速コラムATです。運転席と助手席の間のシフトレバーがないため、より広々とした室内空間が実現しました。
1973年にはビッグマイナーチェンジが実施され、2代目の250型へと移行します。プラットフォームは初代と同じですが、フロントマスクやリアエンドのデザインが変更されたほか、リアオーバーハングが延長されてトランクスペースが広くなりました。
エンジンに関しては、Y40型がY44型 4.4L V型8気筒 OHVに変更され、H30型 直列 3.0L 6気筒 OHVは初代から継続。1975年のマイナーチェンジで、昭和50年排ガス規制に適合させるためにEGI(電子燃料噴射)化したY44E型エンジンに一本化されました。
1990年には、3代目であるJG50型が登場します。前年に発売されたインフィニティQ45(G50型)をベースに製造されたモデルです。インフィニティよりも150mmロングホイールベースが長く設定され、ゆとりある車内空間を実現させました。エンジンもインフィニティと同じVH45DE型 4.5L V型8気筒 DOHCが採用されましたが、公用車としてのニーズが考慮されて若干大人しめの性質となっています。
発売当初は油圧アクティブサスペンションを装着したベースグレードのみが展開されていましたが、1992年にはバネ式のマルチサスペンションを採用したモデルが追加されました。また、同時期にインフィニティQ45と同じホイールベースのプレジデントJSが登場したことも大きなトピックです。
2001年には、F50型シーマとプラットフォームを共用する4代目のPGF50型が登場。基本デザインもほとんどシーマと同じですが、フロントグリルやバンパー、ナンバープレートの位置など一部異なります。随所にメッキが使用され、プレジデントの名前に相応しい高級感溢れるモデルに仕上がっています。また、全長5,060mmとシーマよりも55mm長く設定され、差別化が図られました。
エンジンもシーマと同じVK45DE型 4.5L V型8気筒 DOHCを搭載しています。最高出力280馬力を誇るパワフルなエンジンですが、プレジデントにおいては静粛性を高めるために遮音材を多く使用し、快適な乗車体験をユーザーに届けました。