センチュリーは、1967年から製造・販売されている日本を代表する高級車です。細かな改良はあったものの、発売から1997年までの30年間一度もフルモデルチェンジされなかったという珍しいクルマです。
クラウンエイトに代わる新型車として開発されましたが、すべて新設計で製造されています。トヨタグループの創設者である豊田佐吉の生誕から100年という節目に発売されたことから、「センチュリー(世紀)」と命名されました。
快適性を重視して設計されており、御料車や内閣総理大臣専用車としても有名です。ショーファードリブンカーらしく、1台1台手作業で生産されており、1日に3台しか生産できないといわれています。
初代(VG2#/3#/4#型)1967年〜1997年
アメリカナイズされた日産 プレジデントの影響を受けつつも、日本の伝統美を感じさせる保守的で厳かなデザインが特徴的です。その独特なデザインはセンチュリーらしさとして代々受け継がれ、長らく風化することはありませんでした。
ボディサイズは全長4,980mm、全幅1,980mm、全高1,450mm、ホイールベース2,860mmです。クラウンエイトよりも全長が260mm、全幅は45mmずつ、ホイールベースが120mm拡大されています。
エンジンに関しては、当初クラウンエイト用を発展させた3.0L 3V型が採用されていましたが、1973年4月には排ガス規制の影響で3.4L 4V-U型と4V-EU型に変更。1982年10月には4.0L 5V-EU型に変わりました。
国産車ひいてはアメリカ車でも珍しい複雑なメカニズムも特徴の1つであるエアサスペンションを組み込んだトレーリングアーム式サスペンションを搭載し、ギアボックスはスカットル上部に設置したほか、操舵系のリンケージの大半をエンジン上部に配置しました。
しかし、複雑なメカニズムがどれほど走行性能の向上に影響を与えたのかは不明確だったといわれています。むしろ整備を複雑化させた要因だったといわれ、1982年のマイナーチェンジでフロントサスペンションをマクファーソンストラット式に、リアサスペンションをラテラルロット付き4リンク式に変更し、操舵系システムも一般的なものにするなど、各部位が簡便化されました。
グレードはAタイプ、Bタイプ、Cタイプ、Dタイプの4種類。Bタイプは3速MTコラムシフトにファブリックシートを採用し、いかに旧車らしい装いが特徴的です。Aタイプは初代唯一のフロアシフトで、シートもセパレートシートが使用されています。
CタイプとDタイプは3速ATコラムシフト、トッパー・ファブリックシートを採用した高級グレードです。特にDタイプにはパワーシートやエアコンが標準搭載されおり、快適性がより向上しています。
初代は当時の内閣総理大臣・佐藤栄作の専用車としても知られ、以降3代にわたって内閣総理大臣専用車として使われました。
2代目(GZG5#型)1997年〜2017年
30年ぶりのフルモデルチェンジによって2代目が誕生しました。当時の最新技術によって開発されたモデルですが、デザインに関しては初代の重厚な意匠を受け継いでいます。
ボディサイズは全長5,270mm、全幅1,890mm、全高1,475mm、ホイールベース3,025mm。全長とホイールベースが拡大したたとともに、全高も高くなりました。
ボディーカラーは「神威」(エターナルブラック)、「摩周」(シリーンブルーマイカ)、「瑞雲」(デミュアーブルーマイカメタリックモリブデン)、「鸞鳳」(グロリアスグレーメタリックモリブデン)、「醍醐」(ウェルシーグリーンマイカ)、「精華」(レイディ
エントシルバーメタリック)の5色をラインナップ。各色に日本の古き良き伝統を感じさせる和名が採用されました。
国産乗用車で初めてV型12気筒エンジンを搭載したモデルとしても有名です。トヨタ伝統のJZ型 直列6気筒エンジンをベースにつくられ1GZ-FE型という型式のエンジンで、最高出力280psを発生させます。サスペンションには4輪ダブルウィッシュボーン式の電子制御スカ
イフック・エアサスペンションが採用されました。
標準車のほかに、前席と後席にコントロールパネルを設置したデュアルEMVパッケージ装着車が用意され、コラムシフトとフロアシフトが選択できました。安全装備の充実性も特徴の1つで、衝突安全ボディ(GOA)を導入したほか、SRSエアバッグを6個装備しています。
3代目(UWG60型)2018年〜
21年ぶりのフルモデルチェンジで登場したモデルです。初代の意匠を継承しつつ、「几帳面」と称される威厳あふれるデザインに仕上げられています。「匠の技」と呼ばれる、繊細な手作業での調整は現在もなお続いており、センチュリーのシンボルである鳳凰のエンブレムも手作業で作成されました。
先代と同様にボディカラーには和名を採用し「神威 エターナルブラック」「精華 レディエントシルバーメタリック」「摩周 シリーンブルーマイカ」「飛鳥 ブラッキッシュレッドマイカ」の4色をラインナップ。塗装も手作業で行われており、塗装時間は1台あたり40時間といわれています。
ボディサイズは、全長5,335mm、全幅 1,930mm、全高1,505 mm、ホイールベース3,090mmです。いずれも先代より拡大しており、室内空間の快適性がさらに向上しました。
エンジンは、V型8気筒 5.0 Lの2UR-FSE型と1KM型モーターを組み合わせたハイブリッドです。どちらも4代目レクサスLSに搭載されたものが洗練された仕様であり、システム最高出力は先代を上回る431psを発生させます。
3代目(GRG75型)2023年〜
初代より4ドアセダンのみをラインナップしてきたセンチュリーですが、プラグインハイブリッド採用の新モデルが誕生しました。ボディの特徴からSUVと呼ばれることがありますが、トヨタはSUVという呼称を一切使用していません。
ボディサイズは、全長5,205mm、全幅1,990mm、全高1,805mm、ホイールベース2,950mmです。エンジンには4代目レクサスRX450hと同じ3.5L V6気筒エンジン2GR-FXS型が採用されていますが、プラグインハイブリッド化と車輌重量の増加に伴って、電動モジュールが新しくなっています。駆動方式は「E-Four Advanced」という電気式の四輪駆動です。