カローラレビンは、1972年から2000年までの28年間製造・販売された小型クーペです。後のトヨタ自動車の副社長である久保地理介の「2T-G型エンジンをカローラに積みたい」という要望から開発がはじまりました。スプリンタートレノとは姉妹車で、2代目前期を除きプラットフォームと内外装のほとんどを共用しています。
初代(TE27型)の特徴といえば、オーバーフェンダーが装着されたスポーティで凛々しいボディです。普通のカローラにもクーペモデルが存在しますが、オーバーフェンダーの有無で区別されています。2T-G型DOHCエンジンを搭載しており、最高出力は115ps。1973年のマイナーチェンジで追加されたレビンJにはツインキャブの2T-B型OHVエンジンが搭載されました。
1974年、レビンとして初のフルモデルチェンジが実施されます。2代目前期(TE37型)と位置付けられ、キャブレター仕様のエンジンを搭載して登場するも、1975年の排ガス規制をクリアできずに、同じエンジンを搭載していたスプリンタートレノとともに約1年で生産が中止されてしまいました。生産台数はわずか256台でほとんど市場に流通していません。
開発陣の1年以上にわたる努力の末、キャブレター仕様だった2T-G型エンジンが、電子制御燃料噴射(EFI)と酸化触媒を使用した2T-GEU型エンジンに生まれ変わり、2代目後期(TE51・TE55型)モデルとして復活を果たします。新たなエンジンは最高出力110psと、2T-G型エンジンとほぼ同じスペックを誇りました。サスペンションには専用セッティングが与えられ、タイヤもレビン専用の185/70HR13サイズのスチールラジアルが採用されました。
1979年のフルモデルチェンジで3代目(TE71型)が登場します。大きなトピックとして挙げられるのは、2種類の3ドアハッチバック(ハッチバッククーペとリフトバック)の追加です。サイドには2本のストライプがあしらわれ、上段には「DOHC EFI」と刻まれており、シャープな印象を与えるモデルに仕上がりました。先代と同じく2T-GEU型エンジンが搭載されたが、最高出力は115psにパワーアップ。サスペンションに関しては、リアがリーフスプリングによるリジッドアクスルからラテラルロッド付きの4リンク式に進化しています。
1983年には4代目(AE85・AE86型)が発売されました。「ハチゴー」「ハチロク」の愛称で親しまれており、特にAE86はレビンのなかでも圧倒的な人気を誇ります。カローラとしては5代目にあたる世代で、セダンやハッチバックにはファミリー向けとしてFF方式が採用されましたが、レビンはスポーツ志向のクルマとしてFR方式が採用されました。
外観上はほとんど同じ仕様のAE85とAE86ですが、大きな違いはエンジンです。AE86には名機である4A-GEU型エンジンが搭載され、最高出力130psを誇ります。FR方式と相まって軽快な走りを実現し、多くの走り好きなユーザーを魅了しました。一方AE85には3A-U型エンジンが搭載され、最高出力は85psです。AE86と比較すると大きく劣るものの、4A-G型エンジンを載せて「85改86」というエンジンスワップ車に改造されているケースがしばしば見受けられます。サスペンションは、フロントがストラット式、リアは5リンク式リジットアスクルです。旧態依然とした足回りですが、構造が簡易的であるために改造しやすく、カスタム好きなユーザーから支持される要因の1つとなりました。
「筑波最速、最高速200km/h、国内ラリー制覇」を掲げて開発されたモデルだけあって、AE86はデビュー10日後に全日本選手権ラリーに参戦しています。「ドリフトキング」の愛称で親しまれるレーシングドライバー・土屋圭市からも愛され、「ドリフトを極められたのはAE86のおかげ」とまで語ったといいます。
AE86はレースシーンで多く使われたため、かなりの台数が廃車になったと思われがちですが、実は同年代のカローラよりも現存台数が多いです。これだけ聞くと驚くかもしれませんが、新車販売台数が多かったことと、大事にする人が多かったこと、部品だけでも高い需要があることによって廃車になりづらかったと知れば納得できるでしょう。
1987年のフルモデルチェンジで、5代目(AE91・AE92型)が登場。この世代から駆動方式がFFに変わり、ボディタイプも2ドアクーペに一本化されます。スーパーチャージャーが装備された4A-GZE型エンジン搭載のGT-Zが追加され、前期で145ps、後期で160psを発生させるというハイパワーを誇りました。サスペンションにもトヨタの技術が詰め込まれ、FFに変わってもスポーティな走りは顕在しており、速さの飽くなき探究心がうかがえます。
1991年発売の6代目(AE100・AE101型)では、外観が大きく進化します。初期モデルを除くほとんどのモデルで角目ヘッドライトを採用してたレビンですが、異形ヘッドライトに変更されました。丸みを帯びた形状のスタイリングに変わったことも大きな特徴です。4A-GE型エンジンは、1気筒あたり5バルブ化が図られたとともに、バルブタイミングを制御するVVTシステムが搭載されて、新型エンジンへと生まれ変わりました。GT-Zにはスーパーストラット式サスペンションが標準装備され、高速走行時の直線安定性が向上しています。
最終モデルである7代目(AE110・AE111型)は、1995年にリリースされました。サスペンションの見直しや調整、ボディの構造改良によって先代よりも70kgの軽量化に成功し、走行性能がぐんっと引き上げられました。GT系のグレードに変わってBZ系が登場したことも注目したいトピックです。エンジンに関しては、スーパーチャージャー付きユニットが廃止されたものの、4A-GE型エンジンの性能がブラッシュアップされました。4連スロットロル径の拡大や燃焼室の改良もあって、最高出力は165psにまで到達しました。
新車販売時から走り好きなユーザーを中心に多くの人から愛されたカローラレビン。AE86を筆頭にその人気は今でも衰えず、世界中から熱い支持を得ています。