コロナは、1957年から2001年まで製造・販売されていた小型上級モデルです。1,000cc以下の小型乗用車の市場が拡大するなかで、当時強い発言力をもっていたタクシー業界から要請を受けて開発されました。
カローラ、マークⅡ、クラウンに並ぶトヨタの伝統的なセダンであり、高度経済成長期のなかで多くの国民に愛されたモデルです。初代から5代目までは「トヨペット」ブランドとして販売されました。
初代(T10型)1957年〜1960年
独特な丸いボディから「ダルマ コロナ」と呼ばれます。タクシー業界から開発を急かされていたため、クラウン用の足回り、トヨペットマスターの車体中心部ボディプレス、トヨエース用のS型エンジンと、既存モデルの部品を寄せ集めて生まれました。トヨタの乗用車として初めてモノコック構造を採用し、車重960kgを実現します。
ボディサイズは、全長が3,912mm、全幅が1,470mm、全高は1,555mmです。当初搭載されていたS型エンジンは、1959年のマイナーチェンジでP型エンジンに変更されます。最高出力は33psから45psに向上しました。
2代目(T20・30型)1960年〜1964年
ライバルであったダットサン・ブルーバードを打倒するべく開発されたモデルです。コロナとブルーバードの熾烈な販売争い、通称「BC戦争」のはじまりでした。
日本で初めてティザーキャンペーンを実施したモデルでもあり、発表会には4万近くの人が集まるほどの話題に。初代とは対象的な、オペル レコルトを彷彿とさせる流麗で端正なデザインが女性を中心に多くの支持を集めました。
ボディサイズは、全長が3,990mm、全幅が1,490mm、全高が1,440mmと、先代に比べて背が低くなったものの少々大柄になっています。
特徴的な装備として挙げられるのは、1枚のリーフとコイルスプリングを組み合わせたカンチレバー式のリアサスペンション。優れた操縦性と乗り心地を実現させました。
当初は1.0LのP型エンジンを搭載したモデルのみでしたが、1961年3月には1.5LのR型エンジンを載せた「コロナ 1500」が登場します。続けて、同年10月には自家用車市場の拡大を狙うために「コロナ 1500デラックス」が追加されました。
レース戦績も目覚ましく、1963年の第1回日本グランプリ ツーリングカー1300-1600クラス「C-5」では1位から3位までを独占。コロナの性能の高さを世間にアピールするきっかけとなりました。
3代目(T40・50型)1964年〜1970年
先代までで培ったノウハウを活かし、より高性能なモデルが誕生します。発表して間もないうちに名神高速道路にて「10万km連続高速走行公開テスト」を実施しました。
公衆の前でその性能の高さを見せつけた影響が大きく、日本車として初めてミリオンセラーを達成します。「BC戦争」においても、初めてダットサン・ブルーバードの販売台数を追い抜きました。
「アローライン」と呼ばれるフロントノーズのデザインが特徴的で、先代よりも全長と全幅が拡大され、室内空間の居住性と乗り心地も改良されました。
グレードはスタンダード、デラックス、そしてエントリーモデルの1,200ccがラインナップされます。スタンダードとデラックスではボディカラーの種類が大きく異なり、デラックスでは当時では珍しかったメタリックカラーが採用されました。
スタンダードとデラックスには最高出力70psの1.5L R型エンジンを搭載。サスペンションはフロントにダブルウィッシュボーン、リアにリジット半楕円リーフを採用しています。
また、1968年には3代目コロナをもとにした「コロナマークⅡ」が登場し、それに伴って一部のグレードはマークⅡに移行されました。
4代目(T80・90型)1970年〜1973年
本来はマークⅡが4代目コロナになる予定でしたが、T40・50型が非常に高い人気を誇っていたためにT80型が開発されました。ちなみにT60・70の型式はマークⅡに与えられました。
内外装が大幅にグレードアップしたことが大きな特徴です。堂々としたスタイリングは「シルエット70」と称され、シャープなボディラインは「サンダーウェーブ」と呼ばれました。
全長が4,170mm、全幅が1,570mm、全高は1,400mmと室内が広くなって居住性が向上したほか、シートにはミンクタッチのドレッシーニットを採用。富裕層をターゲットにしたラグジュアリーな仕様に進化しました。
グレードに関しては、1.6L 7R型エンジン搭載の1600デラックス、1.6L 7R-B型エンジン搭載の1600SL、1.5L 2R型エンジン搭載の1500と1500デラックスを用意。
当初ボディタイプは4ドアセダンと5ドアバンのみでしたが、1970年8月には2ドアハードトップが追加されました。2ドアハードトップには1.6Lのユニットを拡大した1.7L 6R型エンジンのほか、1.9Lと1.5Lが搭載されます。
翌月には既存の1.6Lのセダンのエンジンも、1.7L 6R型に換装されます。また、1971年2月には1.5搭載モデルが1.6L 12R型に変更されました。
サスペンションは、先代と同じダブルウィッシュボーンとリジット半楕円リーフですが、チューニングが大幅に見直されています。
5代目(T100・110・120型)1973年〜1978年
厳格化される安全規制と排ガス規制に対応するため、5代目では安全装備が強化されました。全幅を先代よりも50mm拡大して横転時の安全性を高めたほか、国産車で初めてOKモニターを採用。車輌へのトラブルを防ぐ工夫が各所に施されました。
グレードは非常に多彩にラインナップされています。4ドアセダンは2.0Lの2000GTと2000SL、1.8Lの1800SLと1800GL、1800DX、1.6Lの1600GLと1600DX、1600の8種類。2ドアハードトップは、2.0Lの2000GTと2000SL、2000SR、1.8Lの1800SLと1800GL、1800DX、1.6Lの1600GLと1600DXの8種類です。
1973年に追加された2ドアセダンでは1600DX、1600GL、1800SR、2000SRがラインナップされました。
6代目(T130型)1978年〜1982年
それまで「トヨペット」ブランドで販売されていたコロナでしたが、6代目より「トヨタ」ブランドに変わりました。ボディサイズは先代とほとんど同じですが、当時トレンドだった角形4灯式ヘッドライトを採用したほか、衝撃吸収バンパーはウレタン樹脂製に変更されます。
先代と同様に1.6L、1.8L、2.0Lそれぞれで複数のグレードが展開され、ボディタイプには4ドアセダン、2ドアハードトップ、5ドアリフトバック、5ドアバンの4種類をラインナップ。エンジンは1.6L 12T-U型、1.8L 13-TU型、1.8L EFI 3T-EU型、2.0L 21R-U型、2.0L 18R-GEU型の5種類で、全て昭和53年排ガス規制に適合していました。
足回りに関しては、フロントサスペンションが先代までのダブルウィッシュボーンからマクファーソンストラットコイルに変更。リアサスペンションはリジットアスクルのままですが、リーフスプリング式から4リンク+パナールロッド/コイルスプリング式となりました。
7代目(T140型)1982年〜1998年
この世代からプラットフォームをセリカ、カリーナと共用し、外観は「アドバンス・ウェッジ」と呼ばれる角ばったスタイリッシュなスタイルに変わりました。
ボディタイプは4ドアセダン、2ドアハードトップ、5ドアバンの3種類。エンジンは新世代の「レーザーシリーズ」を導入し、1.5L 3A-U型、1.8L 1S-U型、1.8L 3T-EU型、2.0L 18R-GEU型、1.8L ディーゼル 1C型の5種類を設定しました。1982年には、国産車で初めて1.8L DOHC ターボ付きユニット 3T-GTEU型が追加されます。
1983年に8代目が発売されたために、7代目の車種が見直されました。1800SX、1800ディーゼルGX、EXサルーン、EXサルーンADの4つが廃止され、廉価グレードとスポーツ仕様のGT系のみ残るという大幅な変更でした。
8代目(T150・160型)1983年〜1987年
コロナ初のFF(前輪駆動)車。大きな変化を望まない顧客のために、7代目と併売する形で登場しました。当初リリースされたのは5ドアハッチバックのみでしたが、後に4ドアセダンが追加されます。
ボディサイズがカムリより小さくなり、後に登場するカリーナとセリカも同じプラットフォームで製造されました。控えめながらも美しいボディラインが特徴的で、内装は高級ギャザーシートによってラクジュアリーな空間に仕上がっています。
エンジンは1.5L 3A-LU型、1.8L EFI 1S-ELU型、1.8L 1S-ILU型、2.0L ディーゼル 2C-L型をラインナップしました。1985年のマイナーチェンジで2.0L 3S-GELU型を搭載した2.0GT、2.0GT-Rを追加。あわせて1S-ELU型を載せた1800SX-Rも加わりました。
9代目(T170型)1987年〜1992年
先代よりもボディサイズが少し大きくなりました。全長は4,440mm、全幅が1,690mm、全高は1,370mmです。ボディサイズは4ドアセダンと5ドアハッチバック、5ドアバンの3種類。5ドアハッチバックには「SF」(センセーショナル・フィーリング)の名が与えれました。
レイアウトは先代と同じくFFで、FRで生産が続いていたバンもFFに変更されます。積載性が向上し、エンジンは2.0L 3S-GE型、2.0L 3S-FE型、1.8L 4S-Fi型、1.5L 5A-F型、2.0L ディーゼル 2C型をラインナップ。ディーゼル以外の全ては、DOHCの16バルブユニットとなりました。
10代目(T19#型)1992年〜1996年
先代よりもボディが大型化し、カローラを彷彿とさせる丸みのあるデザインになりました。ホイールベースが55mm、全高が40mm、全長が80mm拡大され、前後席のスペースもより広く確保されます。トランクに関してはクラス最大の積載容量で、使い勝手が格段に向上しました。
基本のグレードは、GX、セレクトサルーン、EXサルーンの3種類です。1.8Lと2.0LのみEXサルーンGが設定されました。エンジンは1.6L 4A-FE型、1.8L 4S-FE型、2.0L 3S-FE型、2.0L ディーゼル 2C型で、ディーゼル以外はすべてシザーズギヤ式ハイメカツインカム16バルブです。
1年のみですが、1994年に10代目をベースとしたツーリングカーが全日本ツーリングカー選手権に参戦していました。
11代目(T210型)1996年〜2001年
「プレミオ」のサブネームを冠して発売された、コロナの最終モデルです。ボディタイプは4ドアセダンのみで、装備や外観は先代とほとんど変わりません。強化された点は安全面で、ABSと助手席エアバッグを全車に標準装備したほか、新衝突安全ボディの「GOA」を採用しました。
グレードについては、FFにPREMIO G、PREMIO E、PREMIOがラインナップされ、4WDにはPREMIO EとPREMIOが設定されました。エンジンには、1.6L 4A-FE型、1.8L 7A-FE型、2.0L 3S-FE型(D-4直噴エンジン)、2.0L 3S-FSE型、2.2L ディーゼル 3C-TE型、2.0L ディーゼル ターボ 2C-T型が採用されます。
トヨペットコロナの時代から長きにわたって製造・販売が続いていたコロナですが、2001年に後継車である「プレミオ」と交代し44年の歴史に幕を下ろしました。