約60台のクラシックカーが4日間/1300kmの完走を目指す!ラ・フェスタ ミッレミリア2023

目次
1.■午前8時に会場である明治神宮に到着 2.■ラ・フェスタ ミッレミリアのコースはその年によって異なる 3.■午前11時5分のスタートが近づくにつれて高まる緊張感 4.■まとめ:クラシックカーが東京の街を走る光景は実に美しい

去る10月6日〜9日の4日にわたり、ラ・フェスタ ミッレミリア2023が開催され、当メディアでもスタートの模様の取材が実現した。

筆者自身、この大会にエントリーした友人や知人の応援でスタート会場である明治神宮に足を運んだことはあるが、取材として会場に向かうのはこれが初めて。

いつもより早起きなので、念のためスマートフォンのアラームを設定しておいたが、きっちり5分前に目が覚めた。普段めったにお目にかかれないクラシックカーを間近で観られることに、自然とテンションが上がっていたのかもしれない。

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■午前8時に会場である明治神宮に到着

混雑を避けるため、会場である明治神宮にはおそくとも午前8時前には到着しておきたい。自宅から会場である明治神宮にクルマで向かうと時間が読めないので、通勤電車に揺られて現地へ。会社員だったころ、ほぼ同じ時間帯の山手線内回りに乗って通勤していたが、今回は身動きが取れないほどの混雑ではなかった。多少なりともリモートワークが浸透しているのだろうか。

原宿駅で降車して明治神宮へ。見事な秋晴れ。朝は少しひんやりするくらいの気候で、明治神宮内に用意された車検会場までの徒歩移動が心地良かった。

プレスの受付を済ませて車検会場へ。午前8時前後になると、参加車輌がぞくぞくと入場してくる。すっかり場馴れした参加者もいれば、緊張した面持ちでクルマから降りてきた人もいる。それぞれが挨拶を交わし、華やかなでありながら、どこか和やかな雰囲気すら感じさせる。

まったくの偶然だが、筆者自身、参加者の方のおひとりが古い付き合いのクルマ仲間で、この日が久しぶりの再会となった。今回、ポルシェ356で初エントリーしたという。以前からラ・フェスタ ミッレミリアに参加してみたいという想いがあり、今回ついにその夢が実現したという(公式ホームページを確認したところ、無事完走したようだ)。

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■ラ・フェスタ ミッレミリアのコースはその年によって異なる

ラ・フェスタ ミッレミリアのコースはその年によって異なる。今年は明治神宮をスタートして初日は福島県北塩原村にある裏磐梯レイクリゾートがゴール(全324.9km)。2日目は福島県〜宮城県〜山形県〜福島県を経て、栃木県日光市・日光金谷ホテル&中禅寺金谷ホテル(全417.2km)。3日目は栃木県〜茨城県を経て、千葉県成田市・ANAクラウンプラザホテル成田がゴール(全417.2km)。最終日の4日目は千葉県〜東京都港区・ホテルオークラ東京のゴールを目指す(全255.6km)ルートだ。

4日にわたる全行程は約1300km。しかも、ラ・フェスタ ミッレミリアはただ走ればいいというわけではない。「PC競技」という形式の、れっきとしたレースだ。ルート上にはPC(Prove Cronometrateの略)と呼ばれるチェックポイントが設けられ、それぞれ区間内の基準タイムが定められている。いかにしてこの基準に限りなく近いタイムで走破するか、その総合結果で勝敗が決まる。いずれの区間も正確さが求められるため、上位入賞を目指せば目指すほど気が抜けない。早すぎても遅すぎてもだめなのだ。

これを4日連続、長いときには都内から鈴鹿サーキットまでの片道分くらいの距離をクラシックカーで走破しなければならない。エアコンはもちろんのこと、屋根すらもないクルマだってある。しかも、この時期は天気が周期的に変わる。そうなると、雨のなか雨具を着てもずぶ濡れで目的地を目指さなければならないことも充分にありうる(事実、今年がそうであったように)。

もちろん、シビアに基準タイムを目指すことなく「ラ・フェスタ ミッレミリアへ参加することに意義がある」というスタイルでもいいだろう。事実、毎年このイベントに出られること自体、簡単なことではないからだ。移動時間などを含めると1週間近い時間をこのイベントに費やすことになる。審査や費用面はもちろんのこと、時間の余裕も不可欠。選ばれた人だけがこのイベントに参加できるのだ。

■午前11時5分のスタートが近づくにつれて高まる緊張感

現地に到着してからおよそ3時間、会場内で取材を続けているうちに、あっという間にスタート時間が近づいてきた。参加者の方たちは自身の愛車に乗り込み、専用のラリーコンピューターに基準タイムを入力するなど、車検会場から正面ゲートまでの移動準備に取り掛かっている。

やがて会場のあちこちで参加車輌のエンジンに火が入りはじめ、少しずつ場の緊張感が高まっていく。

そして午前11時5分、ゼッケン1番の1926年製 ブガッティ T35(竹元 京人/竹元 淳子ペア)を先頭に、独特のエンジン音とオイルの匂いを周囲に発しながら各車が正面ゲートまで移動していく。

そして正面ゲートで各車の紹介が行われ、各車が表参道の路上へと放たれていく。たまたま居合わせたギャラリー、そして外国人の方たちが突如現れたクラシックカーの群れに驚いている。外国人の男性は車道にはみ出さんばかりに身を乗り出し、参加車輌に手を振っていた。こうして多くのギャラリーに見送られながら、全4日間、全行程約1300kmのラ・フェスタ ミッレミリア2023の幕があけたのだ。

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■まとめ:クラシックカーが東京の街を走る光景は実に美しい

参加車輌のなかでもっとも古いブガッティTYPE13の生産年は1913年!なんと110年前のクルマだ。

参加資格を有するクルマにはいくつかの条件が課せられているが、そのなかには生産年も含まれる。公式ホームページにはもっとも新しいクルマであっても「〜1967年12月31日に製造された車輌」と明記されているので、名実ともにクラシックカーであることが絶対条件といえる。

しかも、ただ年式が古いクルマであればよい、というわけではない。レプリカモデルはNGであり、FIVA(Fédération Internationale des Véhicules Anciens)またはFIA Historic Regularity Car Pass(HRCP)の承認を得た個体でなければ、ラ・フェスタ ミッレミリアの参加資格が得られない。参加車輌の素性も重視されるのだ。

オーナーおよび参加車輌のエントリーが受理されると、信頼できる主治医に愛車を託し、万全の体制を整えてその年のラ・フェスタ ミッレミリアに挑むことになる。クラシックカーを投機目的などではなく、大人たちが「超真剣に遊ぶためのツール」として文字どおり「酷使」することになるからだ。錆が心配だから雨の日は乗りたくないなどと悠長なことはいっていられない。人かクルマがリタイヤしない限り、4日、今年であれば約1300km先のゴールを目指して走るしかない。

こうして日常生活では接する機会のない人たちと4日間、ともに戦い、ともにゴールを目指して決められたコースを走る。決してライバルであっても敵ではない。そして、無事にゴールできたときにはお互いの健闘を称え合う。そんな濃密かつ非日常な時間が過ごせるだけでもこの大会にエントリーする価値があるように思う。

余談だが、美しいクラシックカーが東京の道を走るだけで、街が一気に華やぐから不思議なものだ。クルマの心臓部が内燃機関からバッテリーへと移行しつつある現在、いつまでのこの美しきクラシックカーが生き生きと走る姿が観られるのだろうか・・・。表参道を走り去るクラシックカーをファインダー越しに追い掛けているうちに、ふと、そんなことが頭をよぎったのだった。

[ライター・カメラ/松村 透]

 

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